これは西馬込一丁目にあった、交通局の馬込車両検修場(通称:車両工場)が使用廃止になる前、最後の検修のために工場入りした電車を、地域情報紙わがまちまごめで取材させていただいたときのレポートです。
当日は東京都交通局の特別なご配慮により、地下から電車が上がってきた後に工場内で行われた分解作業まで、一連の工程を拝見させていただきました。
平成16年3月30日・火曜日・曇り。
馬込車両工場へ入る最後の電車は「5319」編成。工場はこの電車のオーバーホールを最後に、その役目を終えようとしていました。
午前9時半を少し過ぎた頃、暗いトンネルの中に鋭い光を放つヘッドライトがきらめき、独特の甲高いタイフォン一発。「プワァ〜〜〜ン」
「あっ、来る!」独特のVVVFインバータ制御のモーター音を響かせ、4M4T8両編成の「5319」編成がゆっくりゆっくり勾配を上ってきます。
ポールが邪魔だなァ。でも無いとトロリー張れないし…」などとつい考えてしまいました。場所取りが悪かっただけなのに…。
私は、地域情報誌「わがまちまごめ」の取材ということで、交通局の許可をいただき引き上げ線の車止め脇に陣取っていました。
左腕を体に着け、右手の人差し指でニコンF100のシャッターを切りはじめました。
モーター音と共に電車が徐々に近づいてきます。すでに踏切の遮断機は降り、警報音を鳴らしています。工場の皆さんが3箇所の踏み切りの両側に数人ずつ立ち、通行人や車両の規制をしています。中には「えッここ電車が通るの」と驚く一幕もありました。
勾配はトンネル出口から、工場入り口の門前の道路手前まで続きます。「5319」はなおも最徐行で近づいてきます。およそ一秒に一回くらいのつもりでシャッターを切り続けているともうすぐ横に来ていました。M車が通るとゾクゾクします。以前は毎月のように何回も見てきたのに、たった数年のブランクが、新たなコーフンを掻き立て体感させてくれました。
列車番号は決まって「73T」。工場への回送ナンバーなのでしょうか。フロントの左上のLEDの「回送」の横に表示されています。
先頭がモーター車のためでしょうか、車輪がデッデンデデンとジョイントを刻む音が枕木やバラストを伝わって、足の裏に響いてきます。一両平均約30tもの重量があり、それが自分と2メートルも離れていない至近距離を通るのですから、それはもう迫力満点です。
…これを味わったらやめられないのは、やっぱり病気なんだ。マチガイナイ!。
工場に入ると、大きなクレーンで車重約30Kgほどのボディーが軽々と吊り上げられ、台車と離され4基の台座へ乗せられます。そして、パンタグラフ、空調機、ドアーの開閉装置、台車とそれぞれが検修を受けることになります。
終了まで約1ヶ月前後。出場するときは西馬込寄りの4両が1日目に、泉岳寺寄りの4両が2日目に基地へ向かって送り出されます。
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1) 電車は検車場から地下を通り、西馬込駅の裏側を通って地上へ出てきます。
2) 地上へ出る前に一旦停止し安全確認をしてから、上り勾配を最徐行で登ってきます。
いつもより乗務員が多いような…?
3) 真横を通り過ぎる時には、足の裏から振動が伝わってきます。
4) 工場内に入ると、何度か往復しながら徐々に切り離され、1両単位になります。
5) 大きなクレーンで吊り上げられ、はじめに台車とボディが分解されてしまいます。
6) 手前の黄色い小さなスタンド、たった4箇所の上にボディが下ろされます。
7) この台車は、これから台枠・車輪・モーター・ブレーキなどに分解されます。
8) 次々に分解され、1号車・2号車と指定の場所に降ろされ、ボディの分解を待ちます。
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